無知がハッタリで生きる

ゆとり世代が趣味と公務員の仕事と持病について語るブログです。

【生活保護】病院嫌い


私が生活保護の業務に関わって最初の年

無気力、を絵に描いたような被保護者がいました。

無気力を検索して最初に出た画像

自宅の電気消した部屋でぼーっとしていて
眠そうにしていて

普段は何をしているんですか?と聞くと
「何も」と答える、50代男性のBケース


小太り、坊主頭でメガネをした、のんびりしたおじさんです。ただし気力がありません。

もともとホテルの板前をしていたのですが、ホテルが倒産した時に収入が途絶え、

過疎地ゆえになかなか仕事が見つからず生活保護を申請。


最初は保護を脱却しようと就活に励んでいたようですが、3年もたつと意欲が薄れ、現在はほぼ活動していない、とのことでした。


生活保護受給中、稼働年齢層(18〜60歳)の健康な人は就労または就活をしなければなりません。

これを怠ると稼働能力非活用とみなし、生活保護を廃止するのが一般的です。


ただ私の働いていた事務所は結構な過疎地で、求人が少ない地域だったこともあり、稼働していないケースにも比較的寛容でした。


社会人になりたての私は、

健康な人がただただ怠けて税金で暮らしている状況を看過することができず、

何としてもこの人を働かせようと考えました。


そしてこの年の6月、この方に2度目の接触する際、
事務所で提携している就労支援業の方と一緒に支援を計画しました。


しかし、健康体かと思いきや
面談を行った時、ケースの体調が悪そうだったのです。

胃のあたり?が妙に膨れていて、本人は「体力が落ちている」「時々目眩と吐き気がある」と話していたので、

支援を開始する前に一度病院で検査を受けるように、と指導しました。

(医療費、検査費は生活保護の医療扶助で支払われます。交通費を含め、本人の持ち出しはありません。今の私には羨ましい制度。。)



そして本人、病院と調整の上検査の予定を組みました。

そして検査翌日、本人に電話をかけると衝撃的なことを話しました。


「昨日は暑かったから病院に行かなかった」


新米ケースワーカーで、ケースに裏切られることに慣れていなかった私は、

「暑いから行かなかった」とは何事か、と内心憤りました。

本人の希望で、最寄りの病院でなく隣の市の総合病院にアポを取ったのに。。


本人に対し、健康であれば働かなければならないこと、健康でないのなら検査結果でそれを証明しなければならないことを強く伝えました。



それから1週間後、、

再度その方の家を訪れると、やはり電気の消えた部屋でただずんでいました。

面談を申し入れると素直に応じ、部屋で話をすることに。

お腹は相変わらず膨れています。

検査予定日はさほど暑い日でもなく、本当はなぜ病院に行かなかったのかと尋ねました。


答えは、
病院が苦手
とのこと。


ああ。

まあ。

確かに分かります。

病院は大概アウェーな空気がでているし、
検査もよく分からないまま進むことが多いし、
生活保護の無料診療と知るや、態度を変える医療関係者もいます。
私も病院は苦手です。


でもね、
その膨れたお腹は何か良くない病気かも知れないから一度見てもらった方が良いよ
間に合わなくなっても知らないよ
これから夏が近づくと外出がますます億劫になるよ

と宥めすかし、再度期限を設けて検査を促しました。


さらに2週間後、

その方のお宅を訪問すると、少し様子が違いました。

お宅にあげてもらい対面すると、お腹の膨れが前よりも大きくなっており、
額に汗を滲ませているのです。

最近息切れをすることが多い、とも話します。

様子がおかしい、と思い、救急車を呼ぼうか、と申し出ると、

大丈夫です。でも、明日病院に行くことにします。とのこと

私はその場で病院へのアポイントを取り、

バスの時間や乗り継ぎを調べ、ケースに伝えました。

この後少しの世間話をして、生い立ちや働いていた頃の苦労話を聞き、
腰は重いけど根は良いおじさんだなぁ、と親しみを感じました。


そして翌日の夕方、彼から低いトーンの電話が入りました。


「最悪の結果だった。肝硬変の病名がついた」


医療の知識に乏しかった私は、肝機能の低下と捉え、これから通院してしっかり治しましょうね。
と、励ましました。

これを機に本人が危機感を持って、ちゃんと通院してくれればいいな、と前向きに考えていましたが、
彼の声は暗いままでした。


そして翌朝、

事務所にいた私に一本の電話が入りました。

電話は最寄りの警察署からで、


彼が自宅で変死体で見つかった

生活保護受給中の状況について情報提供願いたい
との連絡でした。


朝、様子を見に来た母親が、彼が倒れているのを発見し、その時には手遅れだった様です。

後で知ったのですが、診察した時には肝硬変の末期症状で、病院はお手上げで何の処置もしなかったそうです。


人の死にほぼ触れたことのなかった私には、(ケースワーカーの仕事を通して、この後沢山触れることになるのですが、、)
前日に会話した相手が亡くなる、という経験は大きな衝撃で、何日か食事が取れなくなりました。


訪問した時に私が無理矢理救急車を呼べばよかったのか、とか
もっと積極的に通院を勧めればよかったか、とか
色々思い悩みました。


家財処分のために後日自宅を訪問すると、彼が倒れていたという場所に染みを見つけ、吐きそうになりました。
彼の高齢の母親からは度々電話が入り、延々と泣きつかれました。


体調管理は自己責任だと言い聞かせ、2、3週間かけて私は立ち直ったのですが、

この出来事で、

体調不良の時は病院には早めにかかること

人は大丈夫じゃない状況でも大丈夫と言っちゃうこと

を教訓として得ました。


生活保護の現場でこのようなことが時々あり、

周りの人が本当にツラそうにしていたら、救急車を手配する勇気も必要だと感じました。