無知がハッタリで生きる

ゆとり世代が趣味と公務員の仕事と持病について語るブログです。

【生活保護】ダメ。ゼッタイ。

私の生活保護ケースワーカーとして2年目の6月

その年にまだ一度もお会いしていなかった被保護者の方のお宅を訪問調査することになりました。

訪問調査とは

被保護者の健康状態や家庭状況、就労・就活状況などを確認・調査するためのお宅訪問で、我々ケースワーカーのメイン業務です。
被保護者の年齢、世帯構成などをもとにA-Eの5段階に格付けし、
Aケースは毎月、Eケース(入院・入所者)は12ヶ月に1回程度の訪問調査を行います。


今回訪問した方は、10年以上前に使用した覚醒剤後遺症を治療中の方でした。

精神面が万全でないため主治医から就労不可との診断を受け、
Cケース(年に4回訪問)と格付けをしていました。

その年の4月に訪問のアポイントを試みた時に、
「(精神的に)調子が悪いので、別の時期に改めて来て欲しい」との回答をくれた方でした。

精神的に不安定な方は、季節の変わり目(特に春秋)に調子を崩すことが多く、このようなことがままあります。

そこで少し落ち着いたこの時期に、改めて訪問調査を試みました。


前年度担当からの引き継ぎによると、

不安になることがあるため、

  • 訪問のある日には多めに薬を飲み気持ちを整えてくれる
  • 訪問する時には1週間前に一度、訪問前日にもう一度、日時の連絡を入れるように

との申し送りがされていましたので、
(こちらも不安になる申し送りですね)


訪問1週間前と前日に電話を入れ、午前10時にお宅訪問することでアポイントを取りました。

電話での印象は、よくつっかえる、声の大きいおじさん、というものでした。


そして訪問当日。

事務所を出る時に、
急遽他の被保護者からトラブルの電話を受けてしまい(内容は忘れてしまいました…)、約束の時間に遅れることになりました。

やむを得ずお詫びと時間変更の電話を入れて、
AM10時→PM12時の訪問とし、相手からは「わかりました」と元気良い返事をもらいました。


そして舞い込んだトラブルにカタをつけ、PM12時にお宅付近に行くと、

第64代横綱、曙


175cmに縮めたような、
それでも一般的にはかなりガタイの良いボウズ頭がこちらを睨んでいるのです。

曙「お前がお茶屋か!!?!」

「はい」

曙「お前〜○!※□◇#△!〜○!※□◇#△!つったじゃねぇか!!!!」

何を言っているのかすぐに分かりませんでしたが、怒っているのは間違いなく、
冷静を装って話を聞くと

  • 10時に来ると思っていたら来なかった
  • 2時間以上外で待っていた
  • お前は俺を狂わせようとしている
  • 俺が通行人に危害を加えたら責任取れるのか

と訴えていることが分かりました。


目が正気ではありません。言葉もはっきりしません。
外で待っている理由がわからないし、
お茶屋は人を狂わせる方法など知らないし、
彼が人に危害を加える予定のような口ぶりも不明です。

ただ彼が錯乱状態なのは明らかで、
どうやら当初予定の10時から、ケースワーカーが来るのをずーーっと待っていたことも分かりました。。


そして、
「用があって来たんだろ?上がれ、逃がさねえぞ」(ここだけははっきり聞き取れました)と凄んで、お茶屋は部屋に連行されました。


※訪問調査は、例えば就労・就活中の方や子沢山家庭には重要な意味を持ちますが、彼の場合は就労不可で、病院にも規則正しく通えていたので、通院・生活の状況を聞く程度の予定でした。


部屋に入り、まず謝罪。こちらが無害であることをゆっくり大きな声で説明し、彼を落ち着かせようとしました。

が、彼の怒りは収まりません。

右手でジャージのポケットの中の護身用具であろう何かを握りしめ、血走った目で睨みつけ、支離滅裂な内容で怒鳴り続けました。

お茶屋もビビりながら言葉を慎重に選んで、謝罪をはさみ、怒りのボルテージを下げることに成功。


しかし怒りが収まると今度は、「そこに誰かいるぞっ!!!」と椅子から立って怯え出したり、
「うわああああ」と叫んでキョロキョロしたり、
四畳半の狭いキッチンで大柄な男が暴れていると、流れ弾が来ないかと、気が気じゃありません。


お茶屋と玄関の間に座っている彼を飛び越えて逃げれないかな、とか
もしナイフ向けられた時、とっさにバッグを盾にできるかな、できないよな、とか
彼を置いて去ると自身や通行人を傷つけるかも知れないな、とか色々考えましたが、、


お茶屋も錯乱の一因であるため、彼を落ち着けるしかないと判断し、
さらに30分頑張って彼をなだめ、
「幻覚ですよー。誰もいないですよー」と言葉をかけ、ついに落ち着かせることに成功。

落ち着いた彼と話をし

  • 普段はうつ状態のことが多く、今日は訪問が来るから向精神薬を多く飲んだこと
  • 時間変更の電話は覚えがないこと
  • 時々幻覚を見る自覚があり、人に言われればそれが幻覚と認識できること
  • 今日からしばらくうつ状態に入ると思う、との予想

を聞き出しました。

当初予定の時間に遅れた非礼を改めて詫びて、
訪問の礼と励ましの言葉を述べて彼の家を後にし、

  • 彼の通院先の病院
  • 福祉事務所の精神保健福祉の担当
  • 最寄りの交番
  • 職場の上司

にすぐさま情報共有し、他のお宅の訪問もそこそこにして職場に戻りました。

帰りの車では1人で少し泣きました。

生きて帰れてよかった。。


職場に帰り、事情を電話報告した上司から暖かく迎えられ、

前年度担当にも報告すると、


「(おそらく)玄関の外にいる、姿の見えない来客が怖いんだろうね。
敵だと思って攻撃したことがあるのかも。
そうならないために外で待っていたんじゃないかな。
去年も外で待っててくれたよ。」

と。

なるほど。
10時に来るはずのお客さんは待てども待てども来ない。外にいると、誰かに狙われてるんじゃないかと不安になる。いつもより薬を多く飲んでることも相まってトリップ。。

どうやらこれが真相の様でした。

彼も相当怖い思いをしたのだろうと思うと、安易に時間変更をするべきじゃなかったと反省します。


彼については、その後何度か訪問のアポイントを試みるも、「調子が良くないので改めて欲しい」との回答でした。
保護費の支給日に見かけたことはあったので、外出でき、生活を送れていたことは間違いありませんが、
ちゃんと話ができたのは、この1回きりでした。


薬の後遺症って本当に怖い、
薬物乱用防止ビデオの様なことが本当に起こるんだ、

やめて10年経っても、後遺症に悩むんだ、ということと

自分の為にも相手の為にも約束の時間は厳に守ろう、と心に刻んだ出来事でした。